松岡圭祐『蒼い瞳とニュアージュ』小学館文庫 

カウンセラーらしくないカウンセラー、一ノ瀬恵梨香が初登場しております。岬美由紀とは全く違ったキャラクターですが、誰も傷つけたくないし、傷ついた人を救いたいという意志力なら恵梨香のほうが(局地的には)強そうです。変なたとえですが、マップ兵器のような(笑)強力な力を発動する岬美由紀はどうしても国家レベルの強敵を相手に獅子奮迅の活躍をしていきます。それはそれでとても魅力的なのですが、一ノ瀬恵梨香のような心あたたまる手探りのカウンセラーっていうのもアリじゃないかと思います。どちらかというと若者向けの、嵯峨敏也タイプなのかな。

 作中の絵本にも心惹かれました。以下引用します。

「ニュアージュって、フランス語で雲のこと。きれいな蒼い瞳をした少女は、いままでいちども星をみたことがない。夜空を見上げると、いつも雲に覆われている。少女は、なぜわたしが空をみるといつも雲がいるのと問いかけた。すると雲が答えた。君の蒼い瞳を見に来ているからさ」

ここでの雲とは大人の隠喩です。子供にとっては、自由を妨げる存在と思われる大人達ですが、それは子供たちを愛して見守ろうとしていることを示しているのです。

 自分を救うのは自分でしかありません。人は独りなんです。ただ、手助けをする人がいてくれるのは本当に力強いものです。それが医者、カウンセラー、友人、家族、恋人だったり・・・。愛し愛されることの良さとか考えた作品でした。

GAKU的評価 ★★★☆☆