沢木耕太郎ノンフィクションII 有名であれ 無名であれ

沢木耕太郎ノンフィクションII 有名であれ 無名であれ

 多くの人にインタビューしたノンフィクション集。内容分しっかり楽しませてもらった。
 強く印象に残ったのは、「華麗なる独歩行」の安達瞳子、「面白がる精神」の畑正憲、「帰郷」の趙治勲があげられる。ほかにとりあげられる人物もとても面白い。書き下ろしで毎集バックステージで書いてあるように、沢木耕太郎が誰にもノンフィクションの書き方を学ばずに独力で文体を作り上げたという点が興味深い。まずインタビューする人物が書いた本、書かれた本を10冊集めて読む。これで概略を理解するのだという。彼が若くしてその文体を確立できたという背景には、こういった地味な努力ともいうべき下積みが歴然とあったのだ。
 その彼がインタビューで理解力と想像力をつなぐのは、その人を理解したいと思う情熱だという。そしてそれが実ったときにゾクっとするほどその人に肉薄できる。
 しかし、彼は最後にこう呟くようにまとめる。「果たして、私は本当に彼らを理解できているのだろうか?」
 まだまだ彼は前を向いて歩んでいる。